DR-Z400SMのエンジン腰上のOHをした話。

Bike

概要

  • エンジンをおろさずに作業する。
  • ピストン/シリンダー/ピストンの交換

なぜオーバーホールするに至ったか。

結論から言うと排気バルブが割れていた。
エンジンを切った状態で2速に入れて乗るとスコスコスコ….と音をたてて坂を下れるぐらいに圧縮がなくなった。
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経過と症状

2024年の秋頃より、セルで始動することができなくなり、押し掛けでかけるようになった。
このころからじわじわと燃費が悪化し始め、24km/Lあった燃費が2025年の夏ごろには12km/Lほどになった。
またアイドリングがほとんどできず、排熱も大きかった。( 吸排気が滞っていたのだから当然である。)


ハマったところ

シャフトを回すネジの蓋

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舐めてかかったらネジに舐められた。
ジェネレータカバーを外すことで対応した。
歯車の上の逆三角の突起が合わせるところである。

シリンダーヘッドとシリンダー・腰下を接続するネジ

トルクがきつく、(46N-m)手持ちの工具だけではどうにもならなかった。
近くのホームセンターでは単管パイプが手に入らなかったためG-funパイプ 600mm を工具の延長として接続した。
G-funは少し曲がったが、4つのボルトを外すことができた。

カムシャフトホルダーのネジ

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エンジンをおろさずに腰上を触る際、カムシャフトホルダーのネジの上側にメインフレームがあり、
工具を差し込むラインが取れなかった。
特にホーンのマウントをする部分が邪魔で、これを回すためだけに幅の薄い工具とビットを探し回る羽目になった。


追加で購入した工具

  • バルブスプリングコンプレッサー
    DR-Z400SMは25mmのソケットを使えば取れる。
    ソケットサイズがわからない場合はバルブスプリングリテーナ(バルブを抑えるパーツ)を先に買ってみるとよい。
    コンプレッサーのソケットで抑えるのはリテーナなので、バルブを買ってもサイズはわからない。
    買ったのはこれ。【アストロプロダクツ】AP バルブスプリングコンプレッサーセット (9点組) VC359
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  • トルクレンチ

  • 各種大型の六角
    普段使いのモノをのぞくとジェネレータカバーにあるネジ(シャフトを回すところのカバー)/リアブレーキペダル/点検穴の三か所。

  • 17mmのソケット
    シャフト用を回すのに使った。

  • 12mmのディープソケット
    エンジンを止めているボルトを外すのに使った。

  • スクレイパー

  • 光明丹(こうめいたん/こうみょうたん)
    バルブのすり合わせを確かめるのに使った。
    エンジンオイルでといて使用した。
    (STRAIGHT/ストレート) 光明丹 50g 19-9959

  • タコ棒
    先端に吸盤がついているもののこと。
    バルブをつかんですり合わせるのに使う。
    DR-Zのバルブは排気と吸気でサイズが違うため、これに合ったサイズのものを探す。
    ギリギリぴったり過ぎて、使っているうちにコンパウンドが吸盤の隙間に入り難儀した。
    あんまくっつかない。
    デイトナ バルブラッパー タコ棒 2ヶ1セット

  • 磁石のついた棒(名前忘れた)
    バルブコッタの救出したり使用シーンが多かった。


ケミカル

大体いつもの。
シリンダーヘッドの清掃にエンジンクリーナーを買ったぐらい

バルブのすり合わせ

こちらの記事のほうで触れたので割愛。
光明丹(コウミョウタン)の使い方 — 異風堂々
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バルブクリアランス

EX規定値 0.30 – 0.20
IN規定値 0.20 – 0.10

OH前

EX 左0.15
EX 右0.15
IN 左0.16
IN 右0.11

OH後

EX 左0.26(シム3.05)
EX 右0.26(シム3.00)
IN 左0.16(シム2.82)
IN 右0.16(シム2.82)


ピストンピンの取り付け

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手元の小さめのペンチで問題なくできた。
この動画がわかりやすかった。
ピストンピンサークリップの取り外し・取り付けの仕方。
外し方は、切りかけ(?)のあるところから少し外したところまでサークリップの端をずらして引っ張る。
入れ方も同じで、端を持って切りかけのところにねじ込めばそのままできる。
その後、切りかけと反対側に、サークリップの端が行くように動かす。

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ピストン側には排気側、吸気側の向きがある。( マルのマークがある方が排気 )
僕の環境だと、バイクスタンドを立てたままピストンを取り付ける必要があったのだが、
モリブデングリスをもりもり塗るとピストンピンが滑り落ちるので、先に傾いている側のサークリップだけ取り付け、コンロッドとピストンピンを取り付け、最後に反対側のサークリップを取り付ける手順になる。


ついでにAIキャンセル

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Webike | YOSHIMURA ヨシムラ ブラインドプレート DR-Z400S(764-125-0010) | その他ミラーオプション・補修部品 通販
ヨシムラが 764-125-0010 ブラインドプレート という型番で取り扱ってくれているようだが、他ショップを見ても入荷予定未定となっている。(たぶん正規の入手先はもうない気がする。)
グラストラッカー/ビッグボーイが同じプレートで行けるらしいので、検索するときに探してもいいかもしれない。
今入手するなら、ヤフオクで出回っているものか、最悪自作するしかないと思う。

組付け手順

注意事項

カムチェーンを外した状態でクランクシャフトを回すと、内部でカムチェーンが引っかかって面倒なことになる。
カムチェーンガイドの取り付け位置がわからず、2度エンジンヘッドをつけなおしたのもあって、始めたならクランクケースカバーは開けておくとよい。
カムチェーンが絡まっているかも見える。

ピストン/シリンダーを組付ける。

  • ピストンにリングを組付ける。ピストンの丸がついているほうが排気側。下側のリングから順番に入れること。
    オイルリングを先に入れ、その上下のレールを入れる。
    2ndリング、1stリングの順番で入れる。
    リングには空き口に角度がある。120角度で、EX左上/EX右上/IN正面にそれぞれリングの切れ目を入れる。( サービスマニュアル 3-59)
    dr-ring.png
  • ピストンピンの片側にクリップを付ける。バイクのスタンドで立たせているので、傾いている側に先にクリップを入れてピンが脱落しないようにしておく。
  • ピストンピンにモリブデングリスをぬる。
  • ピストンを組付ける。
  • ピストンとリングにオイルを塗りたくる。
  • ガスケットをセットする。
  • エンジンにピンを二つセットする。
  • シリンダーにオイルを塗りたくる。
  • シリンダーを組付ける。この時、ピストンリングをしっかり押さえつける必要がある。
  • カムチェーンガイドを取り付ける。


バルブを組み付ける

バルブコッタ取り付け 13:00

  • バルブ本体/バルブシールにモリブデングリスを塗る。
  • スプリングの受け(下)を付ける
  • シールを付ける
  • スプリング2種( 巻きがキツいほうが下 )
  • スプリングの受け(上)
  • バルブを組付ける。
  • バルブスプリングコンプレッサで縮めてコッタを取り付ける。

ヘッドを組付ける

  • プラグを抜いておく。
  • L字の冷却水のラインを付けておく。
  • AIのパイプを付けておく
  • 圧縮上死点に合わせておく。( カムチェーンが絡まないように持ち上げる。 )
  • カムチェーンガイドを取り付ける。
    下部にはめ込む場所がある。歯車すれすれにこすりつけるように押し付けながら押し込めば入る。
    シリンダー側にも取り付けるくぼみがあるのできちんと入れる。
  • ガスケットを載せる。
  • ピンを二つ取り付ける。
  • ヘッドを載せる。ヘッドのボルトで規定トルクで組付ける。
    スレッドコンパウンドとエンジンオイルを塗りたくること。
    ワッシャーを忘れないこと。
  • トルクは25N-mで締めて、最後に46N-mで増し締めする。
  • サイドボルトのトルクは10N-m
  • サイドナットのトルクも10N-m
  • プラグをつける。11N-m


カムを組付ける。

dr-cam.png
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– カムシャフトにモリブデングリスとエンジンオイルを塗る。
– カムを取り付ける
それぞれ4点のトルクは10N-m
– 点検穴を確認し、Tのラインが一番上になっていることを確認する。圧縮上死点に合わせる。縦溝をどこに合わせればいいかは、ジェネレータカバーを外せばわかりやすい突起がある。
ピストンの位置が上か下かわからなければ、プラグホールを手でふさいで回すと、圧力でわかる。カムチェーンが巻き込まれないように気を付けること。
– EXとINのカムをそれぞれつけ、モリブデングリスとエンジンオイルを塗りたくる。
– カムの向きを調整する。
– EX側のカムの1と書かれたものをつらに合わせる。
– EX側の2番の真上のリンクを1として、15番目をIN側の3番に合わせる。
– カムを固定する。チェーンガード(?)のある場所は少し長いネジである。締め付けトルクは10N-m サービスマニュアルの3-63ページ。

なんかカムチェーンの長さが足りないんだけど?

クラッチ側のカバーを開ける。
チェーンがたるんでいる状態でクランクを回したりすると下で絡まっている。

カムがチェーンガイドと干渉するんだけど?

チェーンガイドがちゃんと入っていないと思われる。


カムチェーンアジャスターを取り付ける。

  • アジャスターを先に緩めておく。( ロック機構がある。)
  • ガスケット、本体、ネジを取り付ける。
  • ネジのトルクは10N-m
  • アジャスターを締める。8N-m


ヘッドカバーを取り付ける。

  • ヘッドカバーガスケットを取り付ける丸いくぼみの底面側に液体ガスケットをぬる。
  • ガスケットとヘッドカバーを取り付ける。ガスケットやヘッドカバーは脱脂しておく。
  • ヘッドカバーを止めるボルトのワッシャーにエンジンオイルをぬる。
  • どちらのワッシャーも10N-mで締めた後に14N-mで増し締めする。
  • エクステンションがあれば届く。

エンジンマウントを取り付ける。

上の小さいほうの締め付けトルクは40N-m
下の大きいほうの締め付けトルクは66N-m


エキゾースト/マフラーを取り付ける。

上と下の締め付けトルク23N-m
マフラージョイント20N-m
マフラーマウント23N-m


ラジエターを取り付ける。

感想

十分素人でもできるし、工具とパーツさえきちんと準備できていれば2日もあれば全部余裕をもってできると感じた。(固着していなければ。)
このDRには対策前の肉抜きシャフトが入っているので、
いずれ腰下のカウンターシャフトの交換もできればと思う。

参考

分解・組付けはこれらの動画とサービスマニュアルを読めば特に困らなかった。
【DR-Z400SM ピンチ⁈】エンジンから謎の異音!前バラして原因を探る!【モタード SUZUKI 鈴菌 オーバーホール】 – YouTube
【DR-Z400SM OH】素人がバイクのエンジンをフルオーバーホールした結果ヤバいことに・・・【モタード SUZUKI 鈴菌 】 – YouTube
【DR-Z400SM 覚醒】エンジンフルOHで本来の性能を取り戻したDR-Zがヤバい!慣らしを終わらせていざアクセル全開!【モタード SUZUKI 鈴菌 】 – YouTube

【#2】DRZ400SM腰上オーバーホール シリンダー取り外し – YouTube
【#3】DRZ400SM腰上オーバーホール シリンダーヘッド分解 – YouTube
【#4】DRZ400SM腰上オーバーホール シリンダーヘッド超洗浄 – YouTube
【#5】DRZ400SM腰上オーバーホール日記 バルブ超洗浄編 – YouTube
【#6】DRZ400SM腰上オーバーホール日記 シリンダーヘッド整備 – YouTube